冬になると毎年スキーに出かける夫と息子。寒いのが苦手な私はいつもお留守番。彼らから、びわ湖バレイというワードはもう何年も前からずっと聞いていたが、私には関係のない場所、という風に頭で変換されていた。見晴らしがすっごく良くて琵琶湖が一望できるよ。と聞いてはいたけど想像していた以上に素晴らしい景色だった。 2歳くらいの女の子とパパとママの3人で来ていた若い家族がいた。女の子をパパが抱っこしてママが撮り、ママが抱っこしてパパが撮り、というのを何度か繰り返していたので、「よかったら3人の写真お撮りしましょうか?3人揃っての写真ってなかなか撮れないでしょう?」と言って撮ってあげた。ご機嫌斜めだった女の子に、篠山紀信さんばりに、わぁ〜可愛い。めっちゃ可愛く撮れてるよ〜、はーい、もっと笑ってぇー、んー、めちゃめちゃいい感じ〜!と声がけをしながらかなり連写してたくさん撮ってあげた。携帯をお返しする時に、「知らない人にこんなにこの子、笑った事ないです!すご〜い。びっくりー」と、ママが言ってる間も、ずーっとにこにこ笑顔で両手でばいばいしてくれていた。来年の年賀状の写真は、あの中のどれか1枚が候補に上がる予感がしている。

ふと見ると、70代くらいのご夫婦でこられているお2人に目が止まった。無口そうな旦那さんと物静かな感じの奥さん。旦那さんは、ずーっと景色ばかり撮影している。楽しそうな雰囲気、とは言えない空気が流れている。なんだかちょっといたたまれなくなって、よかったらお2人一緒のお写真、お撮りしましょうか?と声をかけたら、旦那さんが秒殺で、いや結構です!と言われたので、あ、そうですか。と立ち去ろうとしたら、少し遅れて奥さんが、撮ってもらいましょう、と。旦那さんは渋々、ここのこの丸いのを押したら撮れるので…と説明しながらiPadを差し出された。数年後、今日撮った写真を見ながら、”お父さん、あの時撮ってもらってて良かったわね。” “まぁ、そうだな。”と言ってもらえるように、と思いながら素敵に撮って差し上げた。ここでも巨匠、篠山紀信さんばりに、もうちょっとくっつきましょか〜、あーいいですねぇー、めっちゃいい感じですよぉ〜、と、被写体の気分が盛り上がる声がけを忘れずに。奥さんの顔がぱっと明るくなって笑顔になられたので、とても嬉しかった。巨匠、篠山紀信さんばりの声がけは、2歳から70歳まで有効ということが実証された。女優さん達が、そんなつもり全然なかったのに気がついたら言われるままにいつのまにか…と口々に言い、セミヌード写真集を出すはずがヌード写真集になってしまうという巨匠、篠山紀信。恐るべし。

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