メトロやバスに乗っていろんな所へ行きました。

街角の小さなお店から、教会や橋どれもが素敵でバスの窓越しから、「わぁ!素敵な建物」「あのパン屋さんの看板かわいいね!」と右左キョロキョロしながら写真をたくさん撮っていたら、私の前に座っていた白髪で綺麗な色のスカーフを巻いたかわいいおばあちゃんに、あなたどこから来たの?と尋ねられた。ジャポン。と答えると、フランス語は出来る?と言われたので、ノン。でも英語なら少しわかります。と言うと、私は英語できないわ。という感じで首を横に振られて、フランス語で何か少し喋ってくださった。私が左の方を見ていると杖で床をコンコン!とする音が聞こえたのでおばあちゃんの方を見ると、杖の先で右の建物をさし、そっちじゃなくてあっちを見なさい。と無言で語りかけてきた。しばらくすると、それはそれは素晴らしい建物が見えてきて、私が、は!っと目を見開いて、大急ぎで写真を撮っていると、また杖で床をコンコン!とする音が聞こえたので、見ると今度は左の前方をさし、次はこっち、というまた無言の指示を受け、見るとまた素敵な建物が見えてきて急いで写真を撮る、というやりとりがひたすら続いたのだけど、しだいに私がうまく写真を撮れなくて、もたもたしておばあちゃんのコンコン!という指示にすぐに対応できなくなってくると、どんどん、コンコン!と言う音が激しくなってきて、最後のあたりは、コンコンコンコンコンッ!!!!何をもたもたしてるの!次はこっちよ!早く見てっ!!と、杖が喋っているように聞こえてきた。1番激しくコンコンされて振り向いた先に、ルーブル美術館があった。あ、ルーブルはね、昨日行ったよ。と、英語で言って写真を撮ろうとしなかったら、すごーく残念そうな悲しい顔になったので、大急ぎで、あ、でもでもこの角度では撮らなかったなぁ〜と、声大きめの棒読みの独り言を言いながら、といってもおばあちゃんには日本語わからないんだけど…写真を撮った。

きっと自分がずっと住んでいる大好きな街を見て、日本から来た私がキョロキョロしながら目をキラキラさせて興奮気味に嬉しそうに写真を撮っているのが、とても嬉しかったのではないかと思う。だからおばあちゃんおすすめの、これは見逃しちゃダメよポイントを1つ残らず教えてくれたのだと思う。

偶然にも嬉しいことに降りるバス停が同じだったので、「メルシー!」たくさんいい写真が撮れたよ、という意味で、自分の携帯電話を指差しそれを両手に包んで、「ありがとう。」とお辞儀をした。あんなにも激しくコンコンして杖であっちだこっちだと、最後のあたりはロッテンマイアさんが、アーデルハイド!と、もたもたしているハイジにヒステリック気味に指示しているかのようだったのに、目も合わせず、背中越しに片手をあげて、グッドラック!とでもいってるようにそのまま行ってしまった。

私の理想は、素敵なかわいいおせっかいおばあちゃんになることだ。