いつの頃からか始まった、読んで良かった本を送りあいっこするという母との習慣。毎年3月になると、本と一緒に母お手製のいかなごの釘煮が送られてくる。またある時には格言?のようなメッセージが1行だけ書かれているメモが添えてあったり、夏にみんなでお出かけした時の写真が挟んであったり。

母はとてもドライな人で、2人で一緒にショッピングをするなどといった、街でよく見かける友達みたいな親子では決してない。年に数回実家に帰省するが、食事やお布団、手土産などの用意はいつも完璧にしてくれているが、民生委員を長くしているのもあって、ご近所の困ってるお家を覗きに行って足りないものがあれば分けてあげたり病院の送り迎えをしてあげたり、リフレッシュしたい若いお母さんの為に数時間、赤ちゃんの面倒をみてあげたり…と何かと困っている方々をお助けするのに日々忙しく、(私たち姉妹は母の事をこの町のマザーテレサ。と呼んでいる。)娘がたまに帰ってきても、これ食べてネ!とメモが貼ってあって、たいてい母の姿はない。母はちらし寿司や押し寿司、土筆の煮物や酢の物など田舎料理が得意で、シーツもきちんと糊付けされているし、手土産も私の大好物のすいかに手作りの煮物、夫や息子にはおいしいお肉を…といった風で抜かりなく完璧だ。

幼少の頃から、押さえるべきところだけ押さえていればオッケー、という方針の子育てだったように思う。てろんとした薄い素材のワンピースを着ていると、横目でちらっと見て、そんな格好をしていて触られたりしてもあなたのせいよ。触発させるような服を着ている方が悪い。とだけ言う。そういう服を着たいのだったらキリッとした態度で近寄れない雰囲気を出しなさい、と。そのせいで、全く隙がない子といわれ全然モテなかった。カツ丼を頼もうとすると、女の子はとんかつ定食はたべてもいいけれど、カツ丼は食べたらダメ。電車の中で上を向いて飲み物を流し込んでいると、ペットボトルではなくてストローで飲むタイプの飲み物にしなさいね。高校生の時にお友達と歩きながらアイスクリームを食べているのを発見された時には、品がない。とそのままゴミ箱に捨てられてしまった。とかまぁ、そういった感じだ。怒るというより静かに諭されるのだが、それがまた怖さを倍増させる。

送られてくる本には、付箋や波線がしてあったりするものもあって、そういう箇所は自然と心して丁寧に読むようになった。本を通して母の言わんとすることを読み解くという…まぁなんとも回りくどいと言えばそれまでだがそれを私なりに解読し、私からもまた読んで良かった本を渡す。返してくれる時に、あなたくらいの年齢の人にはいいでしょうね。なかなかだったわ。など感想が一言だけ添えられる。その中で返してくれない本が時々あって、多分それはだいぶお気に入り、という事なのだろうと思う。

なんの予定もない小雨の降る今日みたいな日は、好きな音楽を聴きながら家でゆっくり1日読書の日。