キャズ エ ドゥミは、1999年4月にオープンし、今年の4月で20周年を迎えました。20年という年月に自分の事ながら驚く。神戸の海岸沿いにある、海岸ビルヂングという明治に建てられた神戸で1番古い洋館の1階にアリアンスグラフィックという素敵なカフェがあって、フランス・パリの街角のカフェに迷い込んだような感覚になるそのカフェが大好きだった。いつか自分のお店を持ちたいという強い想いで、心を鬼にして1ヶ月のお小遣いを5000円に設定し、そろそろ1年が経とうとした頃、ひとりで久しぶりに大好きな洋館巡りでもしようと海岸ビルヂングに行った。すると”1部屋空室あり”の張り紙が目に飛び込んできた!物件を探すために出かけた訳ではなかったので心の準備が全くできておらず、貯金も目標額に達するにはあと半年から1年は時間が必要だった。どうするべきか判断できずクラクラしながら、でももしここでできるのならそんな嬉しいことはない、いつまた空室が出るか分からないし後悔だけはしたくない!と勇気を振り絞ってドアをノックした。すると、(当時は会社の事務所ばかりが入っていて)テナントとしてお貸しするつもりはない、という。お店が入ると不特定多数のお客さんがひっきりなしに来て騒がしくなり、仕事をされている方々に迷惑になるから、と。さっきまで資金も足りずおそるおそるの逃げ腰だったのが嘘のように、「そんなひっきりなしにお客さんが来るようなことには絶対にならないと思います!騒がしくなんてならないです!」と、強気な口調のわりになんとも弱々しい内容の言葉を発していた。ビルのオーナーに1人で直談判。これを20代の若気の至りというのか、怖いもの知らずというのか。(張り紙を見てから30分程しかたっていないのになんという展開。)まぁどう見たってこんな小娘、そんなひっきりなしにお客さんが来るようなお店になる風には到底思えなかったのだろう。騒がしくならないのなら…と、中を見せてくれた。ほかの部屋と違ってこの211号室は社長室だったので、窓やドア、壁に装飾がしてあり豪華なんだよと教えてもらう。床には理科室みたいなピータイルがひいてあったり、蛍光灯だったりと竣工当時の面影はなかったが、自分でなんとかできそうな気がする、と借りることに決めた。予定よりも半年以上の前倒しだ。床を剥ぎ、蛍光灯から白熱の裸電球に変え、壁をペンキで塗り、ペンキを乾かしている間にフランスへ買い付けに行った。飛行機に乗る直前まで徹夜でペンキ塗りをして、そしてそのままパリへ。オフィスビルだったので、土日祝日は16時にビルが閉館するという悪条件。お客さまにまずそのことを知ってもらわないといけない。閉館後は看板を出すことも許されなかった。お店は2階なので閉館してしまうと全く外からはお店がここにあるとはわからない。1番忙しくなるであろう土日祝日の16時でクローズしてしまうお店なんてまず有り得ない。遠くからわざわざ来てくださったお客さまが16時以降に来られてがっかりされないようにするにはどうしたらいいのか?オープン当時は、インスタどころか、ホームページ、ブログ、フェイスブック、ツイッター、そういうあらゆる物がこの世になかった時代だ。それで思いついたのが、”16時でお店が閉まります。”という事が伝えられる店名にしたらいいんじゃないか、と。閉店時間の30分前にはお店にいらしてくださいね、15時半までにはお店に来てね。という意味を込めてフランス語で、15時半。15(quinze)キャーンズ、30分(et demie)エ ドゥミィ、を言いやすくし造語で、3時30分、3 et demiキャズエドゥミという店名にした。(移転の際、3 ET DEMIと大文字表記に変更)細かくいうと午後からは30分、半をエ ドゥミィとは言わず、ちがう言い方になるのだが、15時と半分という言い方がかわいいので、そうした。正しくは3 ET DEMI p.m と表記しなければいけないのかも?数年後、キャズエドゥミが入った事がきっかけとなり、オフィスビルだった海岸ビルヂングは、1つ、また1つとお店が入り、土日祝日も夜まで営業できるようになった。お店をオープンして10年経ったある日、前職のH.P.FRANCEの社長にファッションビルを出て神戸の路面店で営業したいと思っているのだけど良いところを知らない?と相談された。神戸店はラフォーレ原宿店に次ぐ、全国で2店舗目のショップで、そこのオープニングスタッフとして勤務していた私は、ご飯に連れて行ってもらったり、お腹が空いたという社長に持ってたパンをあげて一緒に歩きながら食べたり…と思い出も多く、かわいがってもらっていた。良いところ?あります、あります!私のお店の1階がちょうど空いて、とても素敵な場所なんです。ということでニューヨーク在住だった社長は一時帰国し、即決で入る事になったという経緯がある。

エレベーターが無いなどレトロビルならではの様々な問題が発生し、名残惜しくも旧居留地にお引越しをして5年目を迎える。今、211号室はお取引先でもある、mature haさんのアトリエとして使われていて、知り合いが入ってくれたことが大変喜ばしく、また展示会の度に伺えるのがとても嬉しい。20年。産まれたての赤ちゃんが成人になる年月だ。お客さまお一人お一人にありがとう!とハグをしたい気持ちでいっぱいだ。たくさんの感謝とたくさんのお客さまとの楽しい思い出を抱えてこれからも進んで行きたいと思う。20周年を記念して、ミナペルホネンとエバゴス、ルールロジェットにスペシャルな物をお願いしました。エバゴスは春、ミナとルールは秋頃、店頭に並ぶ予定です。詳細が決まりましたらお知らせいたします。

写真は部屋の引き渡し当日に撮ったもの。前日の夜、急に寂しくなって泣きはらし顔がパンパン。今となってはそれもまた懐かしい。

改めまして、みなさまこれまで本当にありがとうございました。そしてこれからもどうぞよろしくお願いいたします。